佐藤道也さんと『25ansウエディング ジュエリー号』
2002年秋、私は11月に創刊されるジュエリー号の打ち合わせで『25ansウエディング』編集部に来ていました。担当することになったのは、ブライダルリングの基礎的な知識を教えるページです。
とはいっても、その頃の私にジュエリーの知識など皆無。「ダイヤモンドの価値は4Cで決まる」という程度のことしか知らない素人に、いきなりページを作れと言われても…。
「私にできるでしょうか」
不安になって担当編集者に尋ねたところ、彼女は意味ありげに微笑んで言いました。
「大丈夫です。すごい人がいるんです」
とにかく一度その人を訪ねなさい、ということで、当時は神宮前にあったジュエリー シュガーへ出向きました。
扉を開けると、店内はカサブランカの華やかな香り。
「ようこそ。お待ちしていました」
笑顔で迎えてくれた優しそうな男性が、オーナーの佐藤道也さんでした。
その時の取材は、3時間を超えたかもしれません。佐藤さんは何もわからない私に、ダイヤモンド・リングの基本をひとつひとつ、丁寧に教えてくださいました。
プロにとって、専門知識を素人にもわかるように解説するのは、非常に骨の折れる作業だと思います。けれどジュエリーの話をする佐藤さんは、なんだかウキウキと、とても楽しそうなのです。
『ああ、この方は本当にジュエリーが好きなのだ』
当たり前のことかもしれませんが、そう感じずにはいられませんでした。
また、そのお話が実に深みがあり、機知に富んでいて面白いのです。例えば「ハートのような甘口のリングは、年齢を重ねると使えなくなるのでは?」と尋ねたところ、佐藤さんから返ってきたのは「うちで最初にハートを買われたのは、60歳を過ぎた年配の女性でした」という答え。同じハートでも、作り方によって甘くも辛くもなる。そしていちばん大切なのは、その方がいつまでもハートの似合う女性でいようとする努力を忘れないことだ、というのです。
       大丈夫です。すごい人がいるんです。
一度めの取材を終えたとき、編集者の言葉が実感となって、私の胸にストンと落ちました。
井出千昌


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